親が亡くなった後、実家に残された物を前にして、「家全体を整理するといくらかかるのだろう」と迷うことがあります。一軒家の遺品整理費用は、間取りだけでは決まりません。物の量に加え、探してほしい物、残す物、判断を保留する物、搬出条件や追加作業によって、必要な作業が変わります。
公式料金表には、3LDKで105,000円〜(税込)という掲載例があります。ただし、これは一軒家をすべて整理した場合の確定総額ではありません。まず公開料金の条件を確認し、そのうえで自分の実家に必要な作業を見積もってもらうことが大切です。
この記事では、公開料金例の見方、遺品整理の費用の内訳、見積もり前に整理しておきたいことを順に紹介します。探す物・残す物・保留する物を決めるための確認表と、保存して使えるExcelも用意しました。
一軒家の遺品整理はいくらかかる?公開料金例と見方
公式料金表は、金額と条件を一緒に読む
2026年9月26日に確認した、遺品整理事業者2社の公開料金例です。同じ条件での見積もり比較や、おすすめ順ではありません。 いずれも間取り別の掲載料金であり、一戸建て限定の実支払額を集計したものではありません。
| 事業者・対象地域 | 間取り・公開料金 | 人数・時間などの掲載条件 |
|---|---|---|
| 遺品整理プログレス/全国に対応地域を掲載。一部対応できない地域あり | 3LDK 105,000円〜 (税込) | 4〜6時間が目安。人数は料金表に記載なし |
| 同上 | 4LDK 165,000円〜 (税込) | 5〜7時間が目安。人数は料金表に記載なし |
| マインド/東京・神奈川対応と案内 | 3LDK・4DK 120,000〜 (税別) | 3〜7名、1〜2日が目安 |
| 同上 | 4LDK・5DK 150,000〜 (税別) | 4〜10名、1〜3日が目安 |
プログレスの基本料金には、仕分け、処分品の処理、権利書・貴重品の探索、養生、搬出後の清掃などが掲載されています。合同供養は段ボール2個まで基本サービスに含まれ、3個目以降や訪問供養は有料。配送は量と行先で見積もる案内です。出典:プログレス「費用のご案内」
マインドは、仕分け、貴重品・通帳の捜索、家財の搬出、不用品の処分、簡易清掃などを標準サービスとして掲載しています。希望する配送・供養・一時保管まで含まれるかは、この料金表だけで判断せず、見積もり時に確認してください。出典:マインド「遺品整理の料金表」
「○円〜」は、平均額や上限額ではない
開始価格から、物量や現場の状況に応じて見積額が変わります。幅で示された料金も、その会社が示す目安であり、自分の依頼での上限を約束するものとは限りません。
今回の調査では、一軒家の遺品整理について、条件をそろえた信頼できる全国平均は確認できませんでした。上の税込価格と税別価格を合わせて、独自の「相場○万〜○万円」も作っていません。
確認したいのは、実家のどの場所で、どの物を、どこまで整理したときの税込総額なのかです。物置を含むのか、写真や書類の探索を頼めるのか、見つかった物の配送を希望するのかまで伝えると、掲載料金との違いを確認しやすくなります。
遺品整理の費用は、どの作業にかかるのか
遺品整理では、物を運び出す前に「何を探すか」「何を残すか」を確かめる作業が必要になることがあります。見積書では、次の作業が含まれるかを見てください。
| 作業 | 遺品整理で確認すること |
|---|---|
| 探索 | 通帳、印鑑、契約書、権利関係書類、写真、手紙など、指定した物を探せるか。探索範囲と費用はどこまでか |
| 仕分け | 残す物・処分する物・保留品を分ける作業。判断できない物を家族へ確認する流れも含むか |
| 梱包・引渡し | 残す物や形見分けの品を包み、受取人へ渡す作業。梱包資材や一覧の作成まで含むか |
| 搬出 | 家から運び出す作業。階段、大型品、養生などの条件が反映されているか |
| 回収・処理 | 処分する物を収集運搬し、適切に処理する段階。担当する事業者と費用の範囲は明確か |
| 清掃 | 搬出後の掃き掃除・拭き掃除など。水回りやこびりついた汚れの清掃まで含むか |
「探索込み」と書かれていても、家族が探している特定の手紙や写真まで対応できるかは別に確認します。何を手がかりに、どの場所を探すのかを伝え、見つからなかった場合の報告方法も決めておくとよいでしょう。探索を依頼しても、発見が保証されるわけではありません。
一般的な仕分け・搬出・処分の費用の考え方は、実家・空き家の片づけ費用と見積もりの確認点で整理しています。
供養・配送・保管は、希望に合わせて確認する
供養、形見分けの品の配送、一時保管、本格的な清掃などは、すべての依頼で必要になるものではありません。希望するときに、対応できるか、基本料金に含まれるか、別料金かを確認します。
供養なら方法と品数、配送なら行先・数量・梱包、一時保管なら期間・保管場所・返却方法まで伝えます。保管期間が延びた場合の費用も確認しておきましょう。大型品、庭や物置の整理も、室内の基本料金に含まれるとは限りません。
また、簡易清掃とハウスクリーニング、特殊清掃は同じ作業ではありません。臭いや汚れなどで通常の片づけが難しそうな場合は、現状を伝え、対応範囲と別見積もりの要否を確認してください。
一軒家で金額が変わる条件を確認する
「4LDKの家です」という説明だけでは、収納の中や屋外の物量まで伝わりません。見積もりを依頼するときは、次の3つに分けて共有すると整理しやすくなります。
1.部屋以外も含めた対象範囲と物量
居室だけでなく、押し入れ、納戸、物置、庭・屋外を含めるかを確認します。見えている家具は少なくても、収納の中に書類や衣類が多く残っていることがあります。
まだ見ていない場所は「未確認」と伝えて構いません。無理に全部を調べるより、現地で確認してもらう場所を明らかにしましょう。写真だけでの概算なら、現地確認後に金額が変わる条件も聞いておきます。
2.搬出経路と作業体制
2階からの搬出、階段の幅、エレベーターの有無、玄関までの通路、車両を停める場所と家までの距離などを共有します。大きな家具については、自分で解体・移動する前に対応を相談してください。
見積書では、想定する数量、人数、作業時間・日数も確認します。単に人数が少ない方が安いと判断するのではなく、探索や家族への確認を含め、必要な作業が終わる計画かを見ることが大切です。
3.家族への確認と期限
作業中に判断を待つ物がある場合は、連絡できる人と時間帯を伝えます。返答できない間の保留、日程を分ける作業、再訪問が必要な場合の費用も確認対象です。
希望期限があれば、日付だけでなく「その日までにどの場所を空けたいか」を伝えましょう。すべてを一度に終わらせる必要があるのかも、家族で整理できます。これらの条件がすべて一律の加算になるわけではなく、各社の対応と見積もりで確認します。
見積もり前に、残す物・探す物・保留する物を分ける
処分前にいったん保留したい品物や確認先は、遺品整理で捨ててはいけないものは?処分前に保留したい品物と確認先も参考にしてください。
「大切な物は残してください」だけでは、家族と作業する人で判断が違うことがあります。品名、場所、特徴、写真などを使い、次のように区別して伝えます。
- 必ず残す物:場所が分かる物は、目印や保管場所を決める。
- 探してほしい物:品名と特徴、最後に見た場所、分かる範囲の写真を共有する。
- 見つかったら連絡してほしい物:連絡先・方法と、確認前には処分しないことを伝える。
- 処分を保留する物・判断できない物:保留する範囲と、誰に確認するかを記録する。
通帳や印鑑などの貴重品だけでなく、写真、手紙、使い込んだ道具なども、家族が残したい物の対象です。見つかった物は、誰へ、いつ、どの方法で引き渡すかを決めておきます。一覧や写真で受け渡しを確認できるかも相談してください。
国民生活センターは、残す予定の遺品が処分されるトラブルを紹介し、残す物と処分する物を明確に分けるよう案内しています。出典:国民生活センター「遺品整理サービスでの契約トラブル」
作業当日も、担当者と「触らない場所」「保留品の置き場所」を確認できると安心です。立ち会いが難しい場合は、開始前と終了後の写真、途中での連絡、判断がつかないときに作業を止める範囲を相談しましょう。
なお、この整理は作業内容を共有するためのものです。家族間で了承したことだけで、相続上の処分権限まで判断できるとは限りません。処分してよいか法的な判断が必要な物は保留し、弁護士などの専門家へ確認してください。
見積書は総額と追加料金の条件を確認する
「一式」の中に何が含まれているかを見る
「遺品整理一式」と総額だけが記載されている場合は、別紙でもよいので対象場所、作業内容、数量、人数・日数を確認します。探索や保留品の引渡しが抜けていると、同じ金額でも依頼できる内容が違います。
基本料金に含まれるもの、別途費用になるもの、対応できないものを分けて、最終的に支払う税込総額を示してもらいましょう。未確認の費用を「0円」と扱わないことも大切です。
追加になる条件と、作業前の連絡方法を決める
確認するのは「追加料金はありますか」だけではありません。「当日、物置も追加でお願いした場合」「見積もりで見られなかった収納に物があった場合」など、範囲が変わるときの扱いを聞いておきます。
追加作業を始める前に、内容と税込金額を誰へ、どの方法で確認するのかを決めます。連絡がつかなければどうするかも共有し、口頭で変更した場合はメールなどで記録を残すと、後から確かめられます。
契約前には、キャンセルの期限と料金の計算方法、日程変更の扱い、支払時期・方法も確認します。国民生活センターも、作業日、具体的な内容、料金、支払方法、解約料などの事前確認を勧めています。契約や請求で困った場合は、消費者ホットライン188で相談できます。出典:国民生活センター「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」
回収・処理を誰が行うかも確認する
家の中の仕分け・搬出と、家庭ごみの収集運搬は分けて確認します。家庭から出る廃棄物の回収には、市区町村の一般廃棄物処理業の許可や委託が必要です。古物商許可や産業廃棄物処理業の許可だけで、家庭ごみを回収できるわけではありません。出典:環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」
依頼先とは別の事業者が回収するなら、その名称と費用が見積もりに含まれるかを確認します。処分ルートが分からない場合は、実家がある市区町村のごみ担当窓口へ相談してください。
費用と家族の負担を一緒に考える
費用を抑えるために、家族がすべてを仕分けたり、大型家具を運んだりする必要はありません。遠方からの移動や、思い出の品を一つずつ判断する負担もあります。
家族は写真や書類の確認を担い、搬出を依頼する。今回は一部の部屋だけを整理し、判断できない物は残す。このように、家族が確認する部分、依頼する部分、保留する部分を分ける方法もあります。部分依頼への対応と、その場合の費用は見積もりで確かめましょう。
家族の分担が難しいときは、実家の片づけに疲れたときの分担と頼み方も参考にしてください。
買取できる物があれば、整理費用とは別に査定される場合があります。ただし、売れることや費用が安くなることを前提にはしません。整理費用、買取査定額、実際の精算方法を別々に確認し、買取が成立しなかった場合の支払額も確かめます。 詳しくは遺品整理で買取を利用するときの確認点で扱います。
遺品整理の依頼範囲と見積もりを整理する
分からない項目は「不明」「未確認」「保留」のままで構いません。最初からすべてを埋めるのではなく、次に誰へ確認するかまで残しておくと、家族や依頼先と話を進めやすくなります。
表1:探す物と依頼範囲
| 項目 | 整理しておく内容 |
|---|---|
| 対象場所・物量 | 部屋、収納、納戸、物置、庭・屋外。未確認の場所や大型品も記録 |
| 探す物 | 品名、特徴、最後に見た場所、写真などの手がかり |
| 残す物 | 必ず残す品と場所、作業する人に伝える目印 |
| 発見時の連絡 | 見つかったら連絡してほしい物、連絡先と方法 |
| 処分保留 | 判断できない物、触らない範囲、保留品の置き場所 |
| 家族への確認 | 誰に何を確認するか。返答待ちの物は処分しない |
| 引渡し方法 | 受取人、一覧・写真、受取日時と方法 |
| 依頼する作業 | 探索、仕分け、梱包、搬出、回収・処理、清掃。追加作業の希望 |
| 搬出条件 | 階段・通路、車両までの距離、大型品の有無 |
| 立ち会い・期限 | 立ち会える人、当日の連絡先、希望期限と理由 |
表2:見積もり確認
| 確認項目 | 見積書・説明で確かめること |
|---|---|
| 業者・見積日 | 候補名、担当者、見積日、有効期限 |
| 対象・数量・作業体制 | 対象の場所、物量、車両条件、人数、時間・日数 |
| 探索・仕分け・梱包 | 探す物への対応、保留品の扱い、発見物の引渡し |
| 搬出・回収・処理 | 搬出範囲、養生、実際に回収する事業者と費用 |
| 清掃 | 簡易清掃か、別の清掃も含むか。具体的な場所と内容 |
| 供養・配送・一時保管 | 対応可否、方法、数量、配送先、保管期間と返却条件 |
| 含まれるもの・別途・対象外 | 大型品、物置、屋外なども含め、3つに分けて確認 |
| 税込総額 | 整理費用の総額。未確定の項目が残っていないか |
| 追加料金 | 発生する条件、追加前の内容・金額の確認方法と連絡先 |
| 買取額 | 整理費用とは別に記録。未成立時の金額と精算方法 |
| キャンセル・支払い | 期限、料金の計算方法、支払時期・方法 |
上の項目を保存・記入できるExcelです。「探す物と依頼範囲」「見積もり確認」の2シートを収録しています。見積もり確認シートは候補ごとに複製して使えます。金額欄は空欄で、自動計算や業者の採点はありません。
まとめ:まず依頼する内容をそろえてから見積もりを確認する
一軒家の遺品整理費用を考えるときは、料金表の数字だけで決めず、探す物、残す物、保留する物、依頼する範囲を整理することから始めましょう。
いつ着手するか迷っている場合は、遺品整理はいつから始める?急ぐこと・保留することの分け方で、先に急ぐことと後回しにできることを確認できます。
その内容を同じ条件で各社へ伝え、税込総額と作業範囲、別途費用、追加作業前の確認方法を確かめます。判断がつかない物まで急いで処分する必要はありません。
依頼内容が整理でき、業者を比較する段階になったら、遺品整理業者の見積もりと作業内容で確認したいことへ進んでください。