実家じまいは何から始める?家族で確認したいことと進め方

実家じまいは何から始める?家族で確認したいことと進め方

実家のことを考え始めたとき、「荷物が多すぎて、どこから手をつければいいのか分からない」「片づける前に家族で何を決めればいいのか」と迷うことがあります。

最初にすることは、家の中の物を全部捨てることではありません。まず、親本人がこれからどう暮らしたいのか、家族で誰が何を担当するのか、いつまでに何をする必要があるのか、そして家を今後どうする可能性があるのかを整理します。

実家じまいには、家財の整理と家そのものの扱いという二つのテーマがあります。どちらかを完全に終えてから次へ進む必要はなく、状況によっては並行して考えたほうが無駄な作業を減らせます。

この記事では、親が住んでいる場合、入院・施設入所をしている場合、亡くなった場合の違いも含めて、最初の話し合いから作業後の確認までを順に整理します。

実家じまいで考えるのは、荷物と家のこれから

「実家じまい」は、法律上の一つの手続きの名称ではありません。この記事では、親の暮らしや家族の状況に合わせて、実家の家財を整理し、家を今後どう扱うかを考えていく一連の作業を指す言葉として使います。

考えることは、大きく二つに分けられます。

  • 家財をどうするか:残す、判断を保留する、家族などに譲る、売る、処分する
  • 家をどうするか:自分や家族が使う、保有して管理する、貸すことを検討する、売却を検討する

片づけ、遺品整理、家の売却が、すべての家庭で必ずセットになるわけではありません。親が今も住んでいるなら、日常生活に必要な物を残すことが前提になる場合があります。施設へ入所した後でも、家をすぐ売るとは限りません。相続後も、しばらく家族で管理する選択肢はあります。

一方で、家の将来がまだ決まっていなくても、重要書類の場所を確認する、家財の量を把握する、家族の希望をメモする、といった準備は始められます。

また、売却を検討する可能性があるなら、大量の家財を処分したり建物の解体を決めたりする前に、不動産事業者などへ「どの状態まで片づける必要があるか」を相談する方法もあります。売却方法や引き渡し条件によって必要な作業は変わるためです。処分や契約へ進む直前の確認事項は、実家じまいでやってはいけないことと失敗を防ぐ確認ポイントでも整理しています。

家の扱いを考えるときは、実家が空き家になったらどうする?残す・管理する・手放す選択肢も参考にしてください。

親の状況によって、最初に確認することは変わる

同じ実家じまいでも、親が今どのような状況にあるかで、急ぐことや決められることは変わります。

親の状況最初に確認したいこと
親が今も住んでいる本人が今使っている物、これからも使いたい物、家についての希望を確認します。子だけで処分を決めたり、家を空にすることを前提にしたりしません。
入院している退院後に実家へ戻る可能性や、今後の住まいの見通しを確認します。入院したことだけを理由に「もう戻らない」と決めつけないことが大切です。
施設へ入所する・入所した施設へ持っていく物、実家に残す物、家族が預かる物を分けます。同時に、実家を今後使う予定があるかを確認します。入所が即売却を意味するわけではありません。
親が亡くなった通帳や契約書類など大切な物を確保し、家や家財について誰が何を決められるのかを確認します。思い出の品を整理する時間と、期限のある手続きは分けて考えます。

親本人の意思確認や、契約を誰ができるのかについて迷う場合は、家族だけで判断を進めず、自治体の相談窓口や内容に合う専門家へ相談しましょう。

親が亡くなり、不動産を相続する場面では相続登記にも期限があります。法務省によると、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が原則として義務になっています。2024年4月1日より前に相続した未登記の不動産も対象で、一定の場合は2027年3月31日までが期限です。個別の起算点や必要な手続きは事情によって異なるため、該当する場合は法務省の案内や法務局で確認してください。

参考:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

実家じまいを進める順番

ここからは、実家じまいの全体像を7つに分けます。ただし、すべての家庭がこの順番通りに進める必要はありません。入院や退去など期限が迫っている場合は一部を先に進めることもあります。

1.親本人と家族の希望、家と家財の所有関係を確認する

最初に、「誰がどうしたいのか」を分けて書き出します。 実家を手放す寂しさで話が進めにくいときは、実家じまいで気持ちが追いつかないときの整理の仕方も参考にしてください。

親が住んでいるなら、本人が今後も残したい物や、家をどうしたいと考えているかを確認します。きょうだいがいる場合は、「自分は要らない」だけで処分を決めず、ほかの家族が引き取りたい物がないかも確認します。

同時に、家や土地の名義、家財の所有者も確認します。所有関係が分からないものは、すぐ処分せず「確認待ち」にしておくほうが安全です。

メモすること

  • 親本人の希望
  • 家族それぞれの希望
  • 家・土地の名義
  • 判断できない物や確認が必要な物

2.期限と、今回の作業範囲を決める

「実家を片づける」と決めるだけでは、作業が大きすぎて進みにくくなります。

まず、期限があるのかを確認します。たとえば退院前に生活動線を確保したい、施設への持ち物を準備したい、家の査定前に状態を確認したい、といった目的です。

期限がない場合でも、最初から「次の帰省で家を空にする」と考えず、小さな単位にします。

たとえば最初の1回は、

  • 書類がありそうな場所を確認する
  • 各部屋の写真を撮って荷物量を把握する
  • 冷蔵庫の中など傷みやすい物を整理する
  • 家族へ確認が必要な物を一か所にまとめる

という程度でも構いません。

3.現地作業だけでなく、連絡や記録も分担する

実家じまいでは、実際に家へ行く人に負担が偏りやすくなります。しかし必要なのは現地作業だけではありません。

たとえば、

  • 近くに住む人:現地確認、鍵の管理
  • 遠方の人:業者や自治体への問い合わせ、日程調整
  • 別の家族:費用の記録、写真や品物の確認
  • 代表者:家族への連絡、決定事項の共有

という分け方もできます。

4.先に確認・保管する物を分ける

片づけを始めると、目につく物から捨てたくなりますが、紙類や小物の中には後で必要になる物が混ざっていることがあります。

最初に、次のような物を確認します。

  • 家や車などの鍵
  • 通帳、印鑑、保険・年金・不動産・契約関係の書類
  • 現金、貴金属などの貴重品
  • 写真、手紙、アルバムなど思い出の品
  • 親本人や家族に確認してから判断する物

不要そうに見える紙袋や封筒も、中身を見ずに一括処分するのは避けましょう。

細かな仕分けを始めるときは、実家の片づけは何から?残す・売る・処分するものを整理する手順で、保留する物も含めた分け方を確認できます。

5.家の今後を考え、必要な片づけ範囲を決める

家財の仕分けと同時に、家そのものを今後どうする可能性があるかも考えます。

選択肢は、たとえば次のように分かれます。

  • 親本人が住み続ける
  • 自分や家族が使う
  • 当面保有して管理する
  • 貸すことを検討する
  • 売却を検討する

ここで大切なのは、「全部片づけ終えてから家を考える」と決めつけないことです。

売却を検討しているなら、残置物の扱いや引き渡し条件を先に相談できる場合があります。逆に、今後も家族が使うなら、家具や生活用品をすべて処分する必要はありません。

家の方針が未定なら、「今は判断しない」と決めることも一つの選択です。ただし、住む人がいなくなる場合は、鍵の管理、郵便、通風や点検など、誰が家を管理するかは決めておきましょう。

参考:政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!」

6.自分たちで行う作業と、外に頼む作業を分ける

家族だけで全部行う必要はありません。一方で、すべてを一括依頼しなければならないわけでもありません。

たとえば、

  • 思い出の品の仕分けは家族で行う
  • 大型家具の搬出だけ頼む
  • 売れそうな品は買取事業者へ査定を相談する
  • 処分する家庭ごみは自治体のルールを確認する
  • 清掃だけ依頼する

という分け方もできます。

家庭から出る廃棄物の処分を業者へ頼む場合は、回収できる業者かどうかの確認が必要です。環境省は、家庭の廃棄物を回収するには、市区町村の「一般廃棄物処理業の許可」または市区町村からの委託が必要であり、産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可だけでは家庭ごみを回収できないと案内しています。

また、まだ使える物を中古品として売ることと、ごみとして回収・処分してもらうことは別です。買取を依頼する場合は、品目に対応する古物商などへ確認します。

参考:環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」

7.作業後に、残した物と次の担当を共有する

その日の作業が終わったら、「何袋捨てたか」だけで終わらせず、残した物と次の行動を共有します。

確認したいのは、

  • 残した物、保留にした物はどこにあるか
  • 鍵を誰が持っているか
  • 費用を誰がいくら立て替えたか
  • 空き家になる場合、誰が管理するか
  • 次に家を確認する日はいつか
  • 次回までに誰が何を調べるか

です。

実家を残す場合は、片づけが終わっても家の管理は続きます。「今回の作業完了」と「実家じまい全体の完了」を分けて考えましょう。 親戚や近所への連絡が必要な場合は、実家じまいの挨拶で伝える内容と例文を確認できます。

費用は総額を決めつけず、必要な作業から整理する

実家じまいにかかる費用は、家の広さだけでは決まりません。

主な費用には、仕分け、搬出、処分、清掃、家族の交通費のほか、家を残すなら固定資産税や保険、光熱・管理など継続して発生するものもあります。

外部へ依頼する費用も、

  • 荷物の量
  • 階段やエレベーターの有無
  • トラックを停められる場所
  • 作業する部屋
  • 立ち会いの有無
  • 探し物や仕分けまで頼むか
  • 清掃を含めるか

などで変わります。

そのため、全国一律の「実家じまいの平均額」だけで判断するより、自分の実家で必要な作業を分けて見積もるほうが現実的です。

見積もりでは、総額だけでなく「どの作業まで含まれるか」「どんな場合に追加費用が発生するか」を確認します。買取できる品があっても、必ず片づけ費用全体を相殺できるとは限りません。費用項目と家族の予算を整理するときは、実家じまいの費用は何にかかる?片づけ・家の扱い別に整理も参考にしてください。

自分たちで難しいところは、内容に合う窓口へ

相談先を探すときは、「実家じまいを相談したい」と一括りにせず、何に困っているかを分けると探しやすくなります。

困っていること最初に確認する窓口の例
家庭ごみ・粗大ごみの出し方実家がある市区町村のごみ案内・担当窓口
仕分けや大型家具の搬出作業範囲を確認できる片づけ・遺品整理事業者。廃棄物の収集運搬を誰が行うかも確認
売りたい家財その品目を扱う買取事業者
空き家の管理・活用実家所在地の自治体の空き家相談窓口、不動産事業者
不動産の名義・相続法務局や、相談内容に応じた司法書士・弁護士などの専門窓口
税金税務署や税理士など、内容に応じた窓口

国土交通省は、市町村が空き家や土地について一元的な相談窓口を設ける取組を進めています。実家の所在地によって窓口名や対応内容は異なるため、「○○市 空き家 相談」などで自治体の公式ページを確認してください。荷物・買取・家の扱いなど、困っている内容から窓口を選ぶときは、実家じまいはどこに相談する?片づけ・買取・家の扱い別の相談先で整理できます。

参考:国土交通省「空き家対策と所有者不明土地等対策の一体的・総合的推進」

最初の話し合い・帰省に使う確認メモ

最初から結論を出す必要はありません。次の項目を一枚のメモにして、「決まったこと」と「まだ決めないこと」を分けるだけでも、次の行動が見えやすくなります。
保存・記入用に、下の確認項目をまとめたExcelを用意しました。
話し合い・帰省確認メモをダウンロード(Excel)

確認項目記入すること
親本人の希望
まだ本人に確認できていないこと
期限と、その理由
今回やる場所・作業
今回はやらないこと
残す物
判断を保留する物
家の今後で決まっていること
家の今後で未定のこと
連絡担当
現地担当
費用を相談・記録する人
次に確認すること
次に家族で確認する日

今日やるなら、「次の1回で何を確認するか」を決める

実家じまいは、一日で家を空にすることから始めなくて構いません。

今日一つだけ進めるなら、「次に実家へ行ったとき、何を確認するか」を決めてみてください。

たとえば、「権利書や保険関係の書類がどこにあるか親に聞く」「きょうだいに家を今後使う予定があるか聞く」「次の帰省では一部屋だけ写真を撮って荷物量を確認する」といった小さな行動で十分です。

家財の整理と家の今後は、どちらか一方を急いで終わらせるものではありません。親本人の意向、家族の負担、期限、費用を分けて整理し、必要なところから一つずつ進めていきましょう。

記事一覧へ戻る